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蒔絵技術(蒔絵師が蒔絵に関する用語を解説します)


漆芸を鑑賞するときなどのに参考にして下さい
     
 

     蒔絵技法
平蒔絵   ・高蒔絵研出蒔絵   ・肉合研出蒔絵木地蒔絵


蒔絵技術用語追加予定>螺鈿 ほか


このページtop ネット公開2013年で20年目=漆ネット=




 


[平蒔絵] 
        参考作品 「北海道弟子屈高校 校訓碑」
                (書体部分)

 「置目」(漆表面に下絵を置くこと)
   薄手の美濃紙に下絵を描き、裏面に粉入漆で、透けて
   見える下絵のアウトライン等の線を、描き入れる。描
   き終わったら、充分にふきあげた器物にのせ、押し刷
   毛等で紙の上からしごいて転写する。終えたら、器物
   のわずかに付着した漆に金消し粉か白粉を蒔いて仕上
   げる。
    ( 置き目に時間がかかる時や、わずかに残るかも
      知れない置き目を嫌う場合は、漆を焼き漆仕立
      てにして描くと良いでしょう。)
    焼き漆 = 漆をアルミホイルなどに乗せ火にかざし、
         泡立つまで熱し不乾性にした漆。
 
 「地塗り」
   文様を粉入漆(絵漆=弁柄漆)で描く。縁描きや地塗
   りは、それぞれに適した筆を用い、むらのないように
   薄めに塗る。ある本では縁描筆に本根朱筆(鼠毛)を
   使うと書かれていますが、本根朱筆は腰が強く漆の付
   けを持たして描く、細い上絵の線描に適しています。
   平蒔絵の場合、縁描きや地塗りは、蒔く粉が細かいた
   め薄く塗る事が大切で、筆先の水毛のととのった蒔絵
   筆が良いでしょう。
 
 「粉蒔き」    
      地塗りの漆が落ち着いたら、平粉とよばれる金の細粉
   を真綿に付けて蒔く。最初は漆面に直接綿がつかない
   様に、十分金粉をつけて調子を整えて蒔くのが大切で
   す。漆の落着き具合で仕上がりの金色違います。蒔き
   終えたら、湿風呂に入れ乾燥させる。
          
 「粉固め」(摺漆で塗り面に金を定着)
   摺漆(生正味漆)を灯油で希釈し、脱脂綿で文様面を
   傷がつかない様に拭漆を施す。(延摺り)漆は金粉だ
   けに残して、余剰な漆は、ていねいに揉み紙やティッ
   シュペーパーで拭き取る。文様面も拭切るほどにしな
   いと、漆の拭きむらを残す事になります。
   拭漆を終えたら湿風呂で乾かし、再度、同上の工程を
   繰り返し、金粉を塗り面に定着させます。
      
 「磨き」
   文様面の金の磨きは、ゴム(軟式テニスボールを切っ
   た物などが良い)か、鹿皮(セーム皮)に磨き粉と植
   物性油を練ったものを、つけて磨く。
   仕上げ磨きは、文様を含め塗り面全体に油を少しつけ
   酸化チタニュウム等で、油とからめながら手で磨く。
   この工程で、文様外の、拭漆のわずかな残りも、磨き
   取る。

 「上絵付け」 
   上絵は、絵漆を使い線描などは根朱筆で描く。
   金粉を真綿に含ませ蒔き、乾かした後「粉固め」工程
   と同様に摺漆で文様に定着させる。
   上絵摺や磨きは、最終工程に近いのでむらが出来ない
   よう気をつけます。

 * 漆は油分がつくと、乾かなくなりますので手油に
   気を付けます。


        [研出蒔絵]       参考作品 「小野小町歌仙 蒔絵」  「置目」    平蒔絵と同じ  「地研ぎ」    研出仕立てですから、塗面を平蒔絵の場合以上に平滑    にする事が大切です。炭での地研ぎが最良。    この工程は、金の研ぎや仕上りの出来映えにも大きく    影響を与える大切な所です。      「地塗り」    金粉蒔きに濃淡をつけ薄蒔きをほどこす場合は、透き    漆(朱合漆)で地塗りをする事もあります。金粉をつ    め蒔きする時は、平蒔絵と同じ弁柄漆を粉入漆に使い    ます。    (蒔く金粉の号数により、地塗りの厚さを調節する)  「粉蒔き」    平蒔絵とは違い通常は、粉筒で金を蒔く。より金色を    良くするために”蒔詰め”といって一度金粉を蒔いた    後、2号ほど細かな金を蒔き金粉の隙間に詰める方法    も有ります。      「塗込み」    平蒔絵の粉固めと同じことですが、金粉が荒いため刷    毛で漆を塗りこむ。漆は透漆(朱合漆)時には、黒漆    や梨地漆を使う場合もある。湿風呂での乾燥は、半日    ほどで息がかかるほどに乾く様湿度を調節する。塗込    漆が早く乾燥すると透きが悪く、金色が良くならない。  「研出し」    乾燥の調子が良ければ2・3日で荒研ぎが出来る、最初    は研石か耐水ペーパー(1000番ほど)を水を付けなが    ら研ぐ。一度に研ぎ出さず、下層の漆は乾きが十分で    ないので湿風呂で乾燥させながら、再度研ぎの工程を    施す。中研ぎや仕上げ研ぎは、駿河炭(桐炭)や粒子    の細かな、研石などを使います。時には、摺漆を行い    漆面を固めて仕上げ研ぎを行う。  「胴摺り磨き」    研出し終えたら文様面やまわりも含め、以前は、砥粉    と油を練ったもの使いましたが、現在では粒子の細か     なコンパウンドなどで荒磨きします。磨き布は、初め    は、モス等が良いでしょう。    仕上げは柔らかめの綿布で、超微粒子の磨粉をつけて    研傷が残っていないか確かめながら磨く。    その後、上絵付の工程に入るため、表面を油分やよご    れを、アルコールか灯油できれいにふき上げる。      「上絵付け」    上絵は、金線を高くもたす時は、腰の強い筆で漆の付    けをもたす事の出来る、本根朱筆や先白等をを使いま    す。この筆毛は、船ねずみの毛で作られたもので、本    根朱は背中のはしり毛を数本ずつ厳選して製作したも    ので、現在では入手困難な高価な蒔絵筆です。蒔絵筆    で最も高価な筆は「先白」とよばれる本根朱の毛先に    水毛を持つ筆です。この筆は繊細な上絵線描きに使い    ます。わき毛筆は付け描き(金を高めに盛り付ける描    き方)のような、線ではなく面を持つ上絵に適してい    ます。    付けを持たした、繊細な上絵の粉蒔きは、毛簿蒔きが    良いでしょう。 
  [高蒔絵]    塗り面から文様が、高く盛上がっている蒔絵のことを    ”高蒔絵”といいます。高蒔絵は大別して平蒔絵仕立    と研出蒔絵仕立があります。 「文様部分の高上げ」     盛り上げの方法にも特徴があり、「漆上げ」「炭粉上    げ」炭粉の代わりに焼錫粉を蒔く「錫粉上げ」水練り    した砥粉に生漆を混ぜた錆漆でする「錆上げ」などの    技法があります。    研出蒔絵仕立の場合は、盛上部分の研ぎが大切です。     * 以下の工程は、平蒔絵仕立か研出蒔絵仕立かの仕様に    応じて変わります。前に記述された項目を参考にして    ください。
[肉合研出蒔絵]            参考作品 「花鳥山水蒔絵 座卓」    蒔絵の中でもっとも豪華な仕上りになります。色々の    技法や複雑な工程を有し、高度な技術が必要です。    名称にある「肉合(ししあい)」が意味するように、    盛上方法に特徴があります。高蒔絵よりも微妙で複雑    な高低差を施し、それにより文様の表現を高めます。

[木地蒔絵]

 

桃山時代京都の蒔絵師長府により、きゅう漆(漆を塗る事)しない素地すなわち、木地の上に直接蒔絵をする事が考案された。(日本漆工の研究ー沢口悟一著 から)
「和漢諸道具見知抄」にも、蒔絵師長府の事が書かれています。

木地蒔絵で最近話題になったのは、金刀比羅宮の天井絵が木地蒔絵の技術で描かれていて、その復元によって、あらためてその難しさと魅力が注目されました。

なぜ難しいかといいますと、蒔絵技法とくに研ぎ出し高蒔絵等を行う工程では、研ぐ作業が必須ですので、傷や研ぎ水などで周囲が汚れるのが当然ながら、周囲や素地が木地そのままの風合いを残しての作業は困難であるのが当たり前です。 木の素地の魅力をころさずに、蒔絵を行う難しい事に、歴代の名工は挑んでいます。 私たちも、こんなに見事に作り上げられた木製のしかも新材ではなく何か歴史を持った古欅で作られたケースにこそ、木地蒔絵する価値がある と考えました。

 

 

 













  蒔絵筆







































 







 





   






 先白・本根朱・脇毛筆
白い毛が普通の蒔絵筆
 



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螺鈿など逐次